1本目
ドンキーコング(1983年7月15日/ファミコン)— 開発秘話・当時の小ネタ全部載せ
🦍 国民的ゲームの"あの主役"、最初はまったく別キャラの予定だった。その意外な正体は?
🎮 ドンキーコング(1983年7月15日/FC) を覚えてる?
『ドンキーコング』とは? 発売日・スペック早見
| 発売日 | 1983年7月15日 |
|---|---|
| 機種 | ファミコン |
| 発売元 | 任天堂 |
『ドンキーコング』の開発秘話——真相はこうだった
ファミコン本体と同じ日に発売された、記念すべきローンチタイトル3本(『ドンキーコング』『ドンキーコングJR.』『ポパイ』)のうちの1本。鉄骨が組まれた建設現場で、樽を投げる巨大ゴリラからレディを助け出す——のちのマリオの”原点”が、ここにあります。それまでゲームセンターでしか遊べなかったあのゲームが家のテレビで動く、というのが当時いちばんの衝撃でした。
ちなみに同じ1983年4月15日、東京ディズニーランドが開園。当時の大人1デーパスポートは3,900円。ファミコンのカセット1本(3,800円)とほぼ同じ値段でした。
"別キャラの予定だった"の答え
・発端は1980年の業務用ゲーム機「レーダースコープ」。最先端技術を詰め込んだ意欲作でしたが高価で売れず、任天堂は大量の在庫を抱えます。この基板を改造して新しいゲームを作ることになり、社内から企画を募って選ばれたのが、後のドンキーコングでした ・企画の原案は、なんと「ポパイ」のキャラクターを使ったゲーム。ブルートにさらわれたオリーブをポパイが助けに行く——という構図でした。ところがポパイの版権交渉がまとまらず、企画者が自らオリジナルキャラクターをデザインすることに。こうして生まれたのが、ゴリラの「ドンキーコング」と、後にマリオと呼ばれる「ジャンプマン」だったのです ・その企画者こそ、工業デザイナーとして入社したばかりの宮本茂。本作がゲームデザイナーとしてのデビュー作でした。「樽をジャンプで飛び越える」——今では当たり前のジャンプアクションという遊び自体が、このゲームで発明されたと言われています
「ドンキーコング」って、どういう意味?
・「ドンキー(donkey)」は「ロバ」ではなく「とんま・まぬけ」の意味。宮本さんが辞書で見つけた言葉に、キングコングの「コング」を合わせた命名です。アメリカ任天堂からは「donkeyにそんな意味はない」と反対されたものの、語感の良さで押し切ったのだとか ・この名前が原因で、1982年に映画会社ユニバーサルから「キングコングの著作権侵害だ」と訴えられる事件も。任天堂は弁護士ジョン・カービィとともに法廷で争い、勝訴。後年「あの『カービィ』の名前はこの弁護士への感謝から」という説が語られるほど、任天堂の歴史に残る裁判になりました
マリオは、まだ「マリオ」じゃなかった
・本作の主人公に正式な名前はなく、「ジャンプマン」「Mr.ビデオゲーム」などと呼ばれていました。「マリオ」の名は、アメリカ任天堂が借りていた倉庫のオーナー、マリオ・セガール氏にそっくりだったことが由来とされます ・帽子・ヒゲ・オーバーオールという姿は、少ないドット数で顔と体の動きを表現するための苦肉の策。ここから「大工」というキャラ設定が生まれました(配管工になるのはもっと後の話) ・さらわれるヒロインも当時はただ「レディ」。「ポリーン」という名前が日本で正式に使われるのは、11年後のゲームボーイ版(1994年)からです
ファミコン版は、ここが違う
・アーケード版は25m・50m・75m・100mの全4ステージ構成。ところがファミコン版では2面目の「50m」(セメント工場面)がまるごと削られ、3面ループになっています。容量の都合と言われることが多いものの、実は任天堂が理由を公式に説明した記録は見つかっていません ・ゲーム開始時のデモや、ステージクリア時にドンキーコングがレディを担いで登っていく演出もカット。一方でゲーム性そのものは「アーケード版と見まごうほど」と評された移植度でした ・ドンキーコングの色数はアーケード版の4色から3色に減少。宮本さん自身が「胸の前に手を持ってくると色が重なって見えにくいのが残念だった」と振り返っています ・縦長のアーケードモニターから横長のテレビ画面になったことで、画面が「平べったく」なったのも原作者公認の変化。おかげで敵をかわしやすくなり、難易度はやや下がりました ・「高いところから落ちるとミスになる」仕様は健在で、マリオの身長の約1.5倍から落ちただけでアウト。後年の頑丈なマリオからは考えられない繊細さです
ファミコンは、このゲームのために作られた
・実はファミコン本体の開発時、開発責任者の上村雅之さんは半導体メーカーのリコーに対して、回路の仕様書ではなく「この『ドンキーコング』ができるか」という注文の仕方をしました。ゲーム1本がハード性能の”物差し”になったのです ・リコーの技術者たちを動かしたのは「成功すれば、あのドンキーコングを家に持って帰れる」という気持ちだったと上村さんは証言しています。ローンチソフトである以前に、ファミコンというハードそのものの設計目標だった——本作にしかない勲章です
移植したのは、宮本茂を"知らない"男だった
・意外なことに、宮本さん本人はファミコン版の移植作業に直接関わっていません。移植を担ったのは、外部のプログラマー・中郷俊彦さん(SRD)。もともと事務計算ソフトを作っていた人で、ファミコンのCPU(6502系)を扱えたことから任天堂に呼ばれました ・驚くのはここから。中郷さんは移植を終えた時点で、原作者・宮本茂の存在すら知らなかったそうです。仕事が終わったころ、後ろから見知らぬ人物に名前を呼ばれ——それが宮本さんとの初対面。この出会いから『エキサイトバイク』『スーパーマリオブラザーズ』『ゼルダの伝説』へと続く、ゲーム史に残る名コンビが始まりました
『ドンキーコング』の当時の小ネタ10連発
- 1面には、グラフィック上は存在しない「見えないハシゴ」があり、特定の位置で十字キーを下に入れると降りられて、ルートを大きくショートカットできると報告されていますシェア
- ハシゴの上で待ち、樽が降りてくる瞬間にジャンプで飛び越えると「100」の表示が連発して数千点が一気に入る得点技も。ファンの間では「サンダージャンプ」と呼ばれていますシェア
- ハシゴの上端に半端に捕まっていると樽が降りてこなくなる"タル防御"は、当時の子どもたちの必修テクニック。今でもコメント欄で「どのハシゴでもできた」と証言が飛び交いますシェア
- 画面の端に向かってジャンプすると壁に当たって跳ね返る仕様を使った小技や、2面(75m)で最下段の床を歩ける挙動なども見つかっていますシェア
- 前年1982年のゲーム&ウオッチ版ドンキーコング(これは別物)は、世界で初めて「十字ボタン」を搭載したゲーム。マリオシリーズどころか、今のゲーム機すべてに受け継がれる発明がここで生まれましたシェア
- ファミコン版の容量はわずか192キロビット=約24KB。スマホ写真1枚の100分の1ほどのサイズに、この歴史が全部詰まっていますシェア
- ファミコン版の売上は約113万本。発売時定価は3,800円で、のちに4,500円へ改定されましたシェア
- アーケード版には、レベル22で制限時間の計算が桁あふれを起こし、開始約8秒で強制ミスになる「クリア不能バグ」が有名ですが、ファミコン版でも遥か先のレベル133で同様の現象が起きるとされていますシェア
- 削られた50m面は、約30年後の『Donkey Kong: Original Edition』(欧州のマリオ25周年記念Wii、日本では2012年に3DSでプレゼント配信)で公式復活。「ないはずの面」が戻ってくるという粋な仕掛けでしたシェア
- 『スーパーマリオ オデッセイ』(2017年)の都市の国「ニュードンク・シティ」は本作へのオマージュの塊。市長はあのポリーン、お祭りの2D面は25mステージの再現、テーマ曲「Jump Up, Super Star!」には25m面BGMのメロディがアレンジで組み込まれていますシェア
『ドンキーコング』はいま遊べる?(Switch Online・中古相場)
Nintendo Switch Onlineの「ファミリーコンピュータ」にファミコン版が収録済み。ミニファミコンにも入っています。Switchの「アーケードアーカイブス ドンキーコング」(838円)は幻の50m面が遊べる1981年アーケード版——ファミコン版とは”よく似た別物”なので、遊び比べてみるのも一興です。
ゲームセンターの人気者を家に連れて帰る——その夢のために設計されたハードと、その夢を象徴するソフト。ファミコン大図鑑の1本目にふさわしい、すべての始まりの1本でした。遊んだ人も、初めて知った人も、コメントで思い出を教えてもらえたら嬉しいです🦍
情報元・参考資料
- 任天堂公式サイト(ファミコンソフト紹介・ファミコン年表)
- 任天堂「社長が訊く スーパーマリオ25周年」「社長が訊く New スーパーマリオブラザーズ Wii」
- 任天堂「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ発売記念インタビュー ドンキーコング篇」
- Nintendo DREAM WEB 上村雅之インタビュー
- Wikipedia「ドンキーコング」
- ゲームカタログ@Wiki
- ゲーム攻略記
- YouTube: まるピンクのアクションゲーム解説レビュー『【解説】絶体絶命の任天堂を救い
- 「ジャンプ」を発明したマリオのデビュー作』・レトロゲームマニア『FCドンキーコング裏技・バグ・小ネタ集』・matsutakekun『最初期ファミコンソフト① ドンキーコング 裏技付』
